50代で転職を決めた——。こう書くと「何かあったんですか?」と聞かれることが多いのですが、実は大きな事件は何一つありませんでした。突然の異動もなければ、職場の人間関係が悪化したわけでもない。ただ、いつもの日常の中で、ふと立ち止まる瞬間が少しずつ増えていったのです。
この記事では、私が転職を決めるまでの“積み重なった日々”について、同世代の読者の方に向けてリアルにお伝えします。40〜50代で転職に迷っている方に、何か気づきのきっかけになれば嬉しいです。
朝の通勤で“時計を見る癖”がついた
同じ時間、同じ電車、同じ広告。いつもと変わらないはずの通勤時間なのに、ある頃から私は無意識に時計を確認するようになりました。「まだ着かないか」「あと何時間で今日が終わるか」。時間を気にする癖がつき始めた瞬間、私は“仕事をこなすための時間”を生きているのかもしれないと感じたのです。
昼休みに誰とも話さず外へ出るようになった
職場に気の合う同僚や部下はいるのに、気づけば一人で外に出て弁当を買い、車の中で食べる日が増えました。会話が面倒なのではなく、ただ話す気力が少し落ちていただけ。しかし今思えば、これは“自分が縮んでいく感覚”を初めて自覚したタイミングでした。
家に帰った瞬間だけ呼吸が深くなる
玄関の扉を開けた瞬間、思い切り深呼吸する。毎日それを繰り返しているうちに気づきました。「会社では呼吸が浅くなっていたんだ」と。誰かが嫌とか、環境が悪いとかではなく、ただ自分がいつの間にか緊張し続ける働き方になっていたのです。
趣味だったジムの時間が“貴重な逃げ場”になっていく
筋トレは元々ストレス発散のために始めたのですが、いつからか“仕事以外の時間を感じるための場所”になっていきました。トレーニング後の爽快感に「この感覚をもっと増やしたい」と強く思うようになった時、仕事との距離感が変わり始めていると自覚しました。
旅行中の自分が明らかに別人だった
連休を使ってふらりと行った旅行。好きなものを食べ、景色を見て、ただ歩いて、ただ呼吸する。それだけで驚くほど肩の力が抜けていきました。数日後、会社に戻るとすぐに“浅い呼吸の自分”に戻ったことで、私ははっきり気づいたのです。「会社を辞めたいのではなく、この働き方から離れたいんだ」と。
転職を急いだわけではない。やったのは“違和感のメモ”だけ
私は勢いで転職したわけではありません。40代後半や50代の転職が簡単でないことは、自分が一番わかっていました。だからまず始めたのは「違和感を書き留めること」。通勤、昼休み、趣味、旅行で感じたこと。これらをスマホのメモに積み重ねると、一本の線でつながりました。
そして出てきた答えが、「生活のための仕事ではなく、自分が機嫌よく生きる働き方を選びたい」でした。この“芯”が固まったことで、ようやく転職に向き合う準備が整ったのです。
不安は現実的だったが、対処できるものになっていった
お金、年齢、家族の生活——。50代の転職には不安がつきものです。しかし、自分の中で“納得した理由”があると、不思議と不安は対処可能な課題に変わります。家族と話し、生活費を試算し、退職制度を調べ、エージェントを活用し、一つひとつ現実的に解決していきました。
採用された理由はスキルではなく“自分の言葉”だった
50代の採用で評価されるのは、役職やスキルだけではありません。自分の価値観がぶれていないこと、会社の中でどんな役割を担えるか、どんな働き方を望むのか。これを自分の言葉で説明できることが大切です。そしてそれはすべて、日常の違和感を整理したからこそ見えてきたものでした。
もし今、転職に迷っているなら
転職を決めるきっかけは、派手な出来事ではなく、日常に潜む小さな変化です。通勤の癖、呼吸の深さ、昼休みの過ごし方、旅行中の自分——。あなたが本当に大切にしたい働き方は、そこに隠れています。まずは「気づいたことをメモすること」から始めてみてください。それが、私の人生が動き出した最初の一歩でした。
NOTEではさらに具体的な転職の進め方を公開中
この記事では“きっかけ”に絞ってお話ししましたが、実際に私が行った自己棚卸しの方法、職務経歴書の作り方、10カ月の活動で学んだ成功のコツなどは、今後NOTEの有料記事にまとめていきます。50代・40代後半で転職を考える方には、きっと役に立つ内容です。

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